こんにちは、僕です
さて、今回はボーカル調整シリーズの第438回をやっていきたいと思います
2021春M3の新譜、『Link to the Past』で実際に行った、ウィスパー寄りのボーカルデータに対する処理を書いていきます
ウィスパー寄りの声は繊細で芯が細いため、オケに勢いがあるとすぐに聴こえづらくなってしまうかと思います
普段、ボーカルデータを調整するときはできるだけ音をセンターに固めて、狭く、太くを意識して処理しています
しかし、今回の場合だとその処理では芯が細いままで、オケに負けないボーカルデータにすることができませんでした
そこで、普段のボーカル処理+αとして多めの種類の処置を施しました
1.Waves R-Bassによる低域の倍音付与
声にしっかりとした土台が欲しいとき、EQで低域をブーストするかと思うのですが、それだと音量がかさばってモコモコした声になってしまいます
そんなときは低域の倍音を付与できる、Waves R-Bassを使うことが多いです
ベースに重みが欲しいとき、Sin波などのサブベースを追加するのと同じ考え方です
声にも重み成分を付与して、繊細な声でも存在感が出てくるようにします
効果は分かりにくいかもしれませんが、これを抜いてしまうと一気にスカスカの声になります
以前は同じボーカルデータをピッチ補正で1オクターブ下げたものを聴こえるか聴こえないかぐらいの音量で重ねていましたが、それだと声質が少し変わってしまっていました
このプラグインが何かのキャンペーンで無料配布されてから、自然な質感で声の土台を作れるようになってとても重宝しています、ありがとうWaves
2.高域の倍音付与による息感の強調
ディストーションやアンプをセンドとして使って、高域の倍音を付与する方法は普段から色んなトラックに対して使っているのですが、今回は特に色んな倍音を付与したかったため、2種類のエフェクトを使いました
Audio Assault XCTR
これは帯域ごとに歪み量とMixを決められるエフェクトです
低域と中域は声質が変わりやすいので、中高域と高域だけを歪ませています
XCTRを通した音を原音に多めに混ぜて、クリアでウィスパー感が増した音にしてみました
オケに埋もれずに少し浮いたような声にする効果もあると思います
Waves GTR
これはザラついた質感の声を少しだけ原音に混ぜて、オケのベースやギターにも負けない輪郭を作るために使っています
やりすぎるとラジオ音質のようなピーキーな音になってしまいますが、逆に言えば目立たせるためにはとても効果的なエフェクトだと思います
3.コーラスエフェクトによる厚みの付与
コーラスは原音に対してピッチを少しだけずらした音を加えて、厚みや広がりを出すエフェクトですが、広げた分だけ音の芯がぼやけてしまいます
今回の場合は芯を保ったまま厚みが欲しかったので、モノラルのトラックに対してコーラスを挿すことによって、広がりを抑えたまま厚みを作り出しています
Cubase付属 Chorus
クッキリとしたミキシングをする上で、トラック設定をモノラルで処理していくことはかなり重要だと思います
ボーカルに限らず、聴かせたいキメのトラックはモノラル設定で音像を狭くすると、より太く目立つ音にできるかもしれませんね
ちなみにミックス依頼でいただいたデータでも、スネアなどの目立たせたいトラックはステレオエンハンサーを逆に使って音像を狭くして強調させたりしています
4.トランジェントエフェクトによるアタック感の付与
トランジェントも普段から色んなトラックに対して使っているのですが、ウィスパー寄りのボーカルは特にふわふわした音なので、強めにアタックを出すようにしました
Audio Assault Transient+
ただし強くし過ぎると歯擦音が耳に刺さるので注意が必要です
ここまでの処理で高域の息感等を強調した分、しっかりとディエッサーで抑えておきましょう
いかがでしたでしょうか
処理が参考になった方は、是非とも今日寝るときに枕の位置を少しだけずらして寝ていただきたいなと思います
今回はウィスパー寄りの声を処理する際、基本はセンターに固めながら、モノラルのコーラスや低域の倍音、高域の倍音を使って面で押していくようなイメージで進めていきました
この手順で処理したボーカルは以下のリンクで聴くことができます
特に2曲目と3曲目はリバーブの質感にもこだわって作ったので、残響音に注意して聴いていただけると幸いです
それでは、自分はライザと共に錬金術の素材の収集へ向かいます
良きゲームライフを
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